約 1,265,303 件
https://w.atwiki.jp/new-genre/pages/30.html
https://w.atwiki.jp/k-os/pages/3004.html
ここを編集 第五期:BS19~ BS20-X05:X:大天使ララファエル BS20-X08:X:光翼の神剣エンジェリックフェザー BS20-041:U:天使プリマ BS20-042:C:天使姫エトワール 不使用/9話で手札破棄 BS20-053:C:弓ピッド BS20-071:U:光射す丘 BS19-053:M:十剣聖ルシエル 不使用/9話で手札破棄 BS19-109:C:エンジェリックプレッシャー 備考/エピソード 登場回:第3話~ 初戦:第9話/紫の闇、黒き骸王バルトアンデルス! きざくら・くくり/光の黄なるソードアイズ/スィーツメイツ社長 バトルスピリッツソードアイズで登場する光の黄なるソードアイズで、本作のヒロインポジション。無類のお菓子好きで、おいしモノには目が離せず、仲間思いの一面もある。幼少期から天涯孤独で、食料を調達するための過酷な生活を送っていた(このころに同じソードアイズのソラ・リュウヨウと出会っている)。その時に同じつらい思いをしているヤマブキやコガネらとともに、スィーツメイツを創設させ、世界各国へと発展させてきた。当初は自分がソードアイズだということを嫌っていたが、ツルギやほかのソードアイズたちと出会い、自分の運命を徐々に受け入れるようになる。 バトルに勝利時の言葉は『おいしいは…正義!』 大天使ララファエル キザクラの切り札の光の黄なるXレア。幼き頃、天空の使者の一人であるボンバーから宝玉付きの杖とともに渡されたもの。相手をデッキの一番上に戻せるので、デッキの回転率を悪くさせることができるため、強力である。 『ぴぴっとゴージャス正義の光!大天使ララファエル召喚!』 光翼の神剣エンジェリックフェザー 光の黄なるソードブレイヴ。彼女の故郷、メガラニオン最大のひまわり畑『ゾンネンブルーメ』の非常に目立つひまわり近くに埋められていて、11話にて入手する。 『おいしいは正義!それがスィーツメイツの合言葉!光翼の神剣エンジェリックフェザー召喚!』 弓ピッド/天使プリマ モブ。 通算戦績 2勝4敗 第9話/紫の闇、黒き骸王バルトアンデルスVSリローヴ・ラケルス× 第11話/おいしいは正義!光翼の神剣エンジェリックフェザー!VSレーゲン○ 第16話/白夜!仲間割れ!?ツルギVSキザクラ!VSツルギ・タテワキ× 第19話/ブリンガー危うし!ヤイバVSキザクラVS白夜王ヤイバ× 第24話/明かされる真実!黄色デッキ対決!VSルベル・コーリッジ○ 第43~44話/光と闇の儀式 裁きの神剣招来!/神VS人 裁きの神剣起動!VSアマレロ・ベルジェ- 第46話/神の罰!?ハガクレVSキザクラVSハガクレ・シドー× ここを編集 バトルスピリッツソードアイズに戻る
https://w.atwiki.jp/vipavaanother/pages/36.html
ボアククリ 正直何で課金武器にしたのか分からない武器 性能は微妙。でも見た目がかっこいい AIやってまでククリ欲しくない貴族のための武器
https://w.atwiki.jp/wbmwbm/pages/108.html
都内某所の公園で、その戦闘訓練は行われる。 夜間、一般人も使用する公園での「暗殺」行為はとても難しいものとされている。安全が保障されている公園内で事故を装って暗殺する事はまず出来ない上、何より24時間一般人に解放されている「公園」という場所で、人を殺める事はとても難しい事なのだ。 それ故に、この訓練の必要性があるのだ。 夜9時、部隊で犯人役に抜擢された1人が公園に放たれた。彼の任務は、「夜10時まで1人の暗殺者から逃れ続ける事。そして生還すれば、犯人役の勝利」とされた。その際に、暗殺者役を迎え撃つ事も良しとされた。 犯人役、暗殺者役とも武器の所持は1発の弾が装填された麻酔銃のみとされた。 「さて、どう攻めましょう。私に与えられた時間は1時間ですね?」そう上官に言ったのは、今回の暗殺者役のKarenだ。 Karenは青いロングヘアーの上に黒いベレー帽を被り、腕や太股の露出の多いレザー戦闘スーツに身を包んでいた。 「いけ。」上官はKarenの体を直視せずに言った。「了解。」Karenは一瞬で公園の闇の中へと消えていった。。。 「見つけましたわ♪」訓練開始から丁度10分が経過した時、Karenはターゲットを確認した。ターゲットは、全身を黒の迷彩服被い完全に闇と同化していた。 しかし、完全に<黒い>戦闘服は公園に取り付けられた街灯の明かりや、月明かりから自らをより際立たせてしまう。よって犯人役は必然的に「真っ暗闇」の中を移動し続けなければならなかった。 Karenが開始10分でターゲットを確認出来たのも、公園の中にある「真っ暗闇」を重点的に捜索すれば良かったからであった。公園の中で光が当たりずらい場所、それは公園の森の中だった。 「さて、どうしましょう。」Karenは考えた。Karenが着ている戦闘スーツは過度に露出が多い。少しの明かりでもあれば、遠くからでも黙視出来てしまう程のものだ。 犯人役とKarenとの距離は約10メートル。Karenはそこから犯人役を狙撃する事も考えたが、森の中にいるために木々などの遮蔽物が多すぎる。更に装填されている弾は一発しかないのだ。 犯人役は周囲を警戒しながら、闇の中を移動し続ける。時間制限があるために、一カ所に留まらず、移動し続けているのだ。 犯人役はこちらには気づいていないだろうが、向こうもただの素人ではない。犯人役の10メートル圏内に入れば確実に、Karenの存在に気づき、姿を消すであろう。 「仕留めるチャンスは、一回だけって事みたいね、、、」そう言って、Karenは犯人役から遠ざかり、やがて暗闇の中に完全に姿を消してしまった。 53分経過_____ 移動し続ける犯人役も、一向に暗殺者役が現れないので集中力が途切れ始めていた。更に、通常の訓練とは違い暗殺者から逃亡しつつ、尚かつ「一般人からの目」にも神経を張らなければならなかったので、神経がすり減り注意力が散漫になり始めていた。 前にも聞いた事がある。決して過酷な訓練ではないが、「一般の目がある公共の場所」における暗殺訓練はセンスのある者でなければクリアーする事が出来ないと。「暗殺」という非日常的な行為を行う事と、日常的な公園という場所が暗殺者に迷いと混乱を引き起こさせるのだ。事実、この訓練を成功させている戦闘員は数える程しかいない。 犯人役は、暗闇の森の中で、月明かりの当たる草木の生えていない、ちょっとした場所を見つけた。残りの数分をここで過ごそうと決めた。 万が一、暗殺者役が現れたとしても麻酔銃で応戦する事が出来るし、仮に撃たれたとしても麻酔銃で完全に眠りに落ちるまで数分はかかる。勝ったかな。そう口に出そうとした、 その時!! バシュ!!!という乾いた音とガサガサという二種類の音が闇の中から聞こえた。1つの音は聞き慣れた麻酔銃の音だった。そして、もう1つの音は「何か」もしくは「誰か」が森の中を高速で動いた音であった。恐らく自分の背後に回ったのかもしれない。 ここは月明かりで照らされている。暗殺者役からは、俺はまる見えだ。 ガサっ!!!闇の中の一点で音が聞こえた! 「きやがったな!」と犯人役が麻酔銃を構えようとした、その時、上空から巨大な何かが自分に降って来た。一瞬、野生の蛇か何かと思ったが、違う。 あまりの重さで、支えきれず、その上空から降って来た何かと共に草の上に伏した。地面に接地したとほぼ同時に、その「何か」はまるで大蛇の様に自分の全身に絡み付いた。 ギチギチギチギチギチ!!!! と自分の胴体が正面から締め上げられる。 正面を見ると、甘い香りのする青いロングヘアーのベレー帽を被った女がニッコリとした笑顔で俺を見ている。この女は、木の上から麻酔銃や石を俺の周囲に投げ、俺の周りに音を作り出し、その隙をついて上空から飛び降りてきたのだ。 「お待たせしました♪暗殺者役のKarenです。どうやってアナタを料理しようか考えてたら時間が無くなってしまいましたわ。ホント、お待たせしてごめんなさいね。すぐに「楽」にして差し上げますわ。」 そういうと、Karenは犯人役の胴体に絡み付けていた自らの太股を、犯人役の首に巻き付け、ギュッ!と軽く締め上げたが、ポイントが気に入らなかったのが、 ラフレシアの花びらの様に、大きく股を広げ、犯人役の顔面を再度自分の太股に誘った。それと同時に、犯人役の右腕を自分の脇の下に入れ、完全に固定した。 ギチギチギチギチギチギチぃぃぃ!! Karenが締め上げるごとに、レザー戦闘服が音をあげる。 「出来上がりですわ♪腕は極められ、首は私の太股が蛇の様に絡み付いて、挙げ句に、レザー製パンツですから、呼吸すら出来ないんじゃありませんか?ウフフ、、、」 犯人役は懸命にKarenが作り上げた三重苦から逃げようとするが、出来ない。更に、Karenのこの「極め方」は完璧といえる。身動き1つ取れない上に、声1つあげる事も出来ない。これが訓練でなければ、俺は、、、、、 「、、、、、くっ、、、、、くっ、、、、、、」 犯人役は急速に体力を奪われて行く。 綺麗に技が入り過ぎているのだ。 「どうあがいても無駄ですわよ♪「暗闇」で露出が多い方が近接戦闘の際には向いてるんですのよ?たとえば、、、、 Karenは男の首に巻き付けた豊満な太股に一気に力を入れた。 ぎゅううううううううううううううううううう!!!! 犯人役の意識が一気に遠のく。 Karenは自分の技がどのように相手に掛かっているのか「目視」で確認しながら技を調整しているのだ。月明かりが、Karenの腕や太股を僅かに照らし、彼女はそれを見て、犯人役を地獄へと誘う。 「私の太股のお味はどうです?今、頸動脈を締め上げて差し上げましたけど、私のレザーパンツで涎ダラダラ垂らしながら、ゆっくりと<窒息>したいです?それとも、、、、、」 ぎゅうううううううううううううううううううう!!!!! 「こんな感じで一瞬で極めて差し上げましょうか?あらあら、仕方のない人ですわね。私のレザーパンツに涎垂らし過ぎですわよ?フフフ、お仕置きですわ♪」 ボキッ!!!!! と先ほどから極められていた右腕の関節を折られた。 「!!!!!!!!っ、、、、、!!!」 激痛が右腕に走るが、声を上げる事が出来ない。Karenのレザーパンツに鼻も口も完全に塞がれているからだ。 「あはははは!!そんなに、私の中でお声をあげないで頂けます?不愉快ですわ。それでは、ごきげんよう♪」 そういうとKarenは、首を拘束するように巻き付けていた太股を、一度天高く伸ばし、その両脚を交差させた。 ぎゅううううううううううううう!!!!!!!!!! 「また、今度。じっくり遊んであげますわ♪」 ぎゅうううううううううううううううううううううううううううううう!!!! _______________ 後日談 訓練終了後、今回の訓練がどのようなものであったが検証された。 犯人役の俺と暗殺者役のKarenにはそれぞれ個別にGPSが付けられていた。会議室のスクリーン上には、俺つまり犯人役を表す青い矢印と、Karenを表す赤い矢印が映し出されていた。 青い矢印はいわゆる「軍事訓練」で行われるようなセオリー通りの進み方をするのに対して、赤い矢印は縦横無尽にスクリーン上を高速で移動した。そして、あっという間に青い矢印を発見したかと思うと、赤い矢印は、青い矢印を先回りする形で移動しはじめた。 一般人の目に触れず、かつ効率的に相手を制圧出来る位置を探していたのだそうだ。本部は公園内で「暗殺が効率的に行える推奨場所」は合計で3つあったのだそうだが、Karenはそれを全て無視した。 というのも、彼女は部隊における「幹部候補生」で「推奨される場所以外での制圧」、「犯人役、一般人が絶対に通らない<完全な安全地帯>に5つのブービートラップの設置」など、様々な「条件」が付けられていたそうだ。 通常の小隊レベルですら1時間で、この任務全てを遂行する事は難しいだろう。 彼女になら、、、 嫌、そういう考えはやめよう。「生き残る」ために俺も強くならなければならない。
https://w.atwiki.jp/aohitolov3/pages/76.html
special past episode1◆暗殺者たちの夜 『花の名』◆「ずるいわ。さっきのは私のなのに……これじゃ今回もまた63号に取られちゃう」そう口を尖らせる少女をなだめるように、63号と呼ばれた、皆より頭一つ背の高い少年が言った。「88号がせっかちすぎるんだよ。相手に気付かれてから殺してちゃ暗殺にならないだろ?」夜闇にまぎれ、町を駆ける四人の少年少女。彼らの黒い外套に一様に描かれた“天使の羽に包まれた短剣”――それは、この大陸に古くから巣食う闇、暗殺組織ジグラトの紋章だった。「仕方ないじゃない。63号達と違って私と72号は『イレイカ』だもの……見つかり易いし絶対不利よ。72号もそう思うでしょ?」「うん……でも、88号はすぐに武器出しちゃうから……もっと相手をひきつけてからじゃないと…」72号と呼ばれた巻き毛の少女は困ったように笑って答える。「そうかしら? 72号は待ちすぎだと思うわ。今日だって結局警備の人に抵抗されて、腕を少し斬られちゃったじゃない」63号は、食い下がる88号から話をそらすように一番背の低い少年に語りかけた。「でも今回は84号に助けられたな。さすが噂の新人ラ・84号ってわけだ」訓練生の二つの兵種――遠殺や静殺専門のライヒル、攪乱と近殺専門のイレイカ。少年は今期84人目のライヒル――だから、ラ・84号。「そうね。あの時の投剣……あんな遠くから当てるなんて」「あぁ、助かったよ。あの猫には可哀そうなことをしたけどな」「………」しかし、84号は二人の言葉に返事をすることなく、じっと前を見つめたままだった。「何よ、84号。せっかく褒められてるんだから、なにか言ったら?」「いいさ。きっとあの時殺した猫のことを気にしてるんだよ……84号は優しいからな」「今日殺したカンリョーは悪い人だって先生が言ってたけど、あの猫は悪くないものね……」「仕方ないんじゃない? あそこで飛び出されてたら、私たちが隠れてるのばれてたわけだし。それに――悪い猫じゃないならきっと『神様の国』に行けるわよ」88号が明るく笑う。そんな3人をよそに、84号は、夜闇の中に隠れたいとでもいうかのように、月明かりにうっすらと反射する紫銀色の髪を外套のフードで覆い隠し、呟いた。「……でも かわいそうだった。たくさん血が出て…」石畳に軽く響く、四人の足音だけを残して広がる静寂――。63号は、84号の頭をポンと叩くと、民家の軒先に積まれた短い薪を一本抜き取って差し出した。「ほら84号、こないだ教えたろ? やってみな、少しはマシになるから」84号は下を向いたままコクリとうなずき、そっと薪を懐にしまった。ジグラトの地下訓練所――居並ぶ数十名の訓練生の前に立つ赤いローブの人物が、優しげな声で皆に語りかける。「みなさん、今日も良く頑張りましたね。あなた達のおかげで世界はまた一つ理想に近づきました。それでは今回の優秀者を発表します」訓練生達の顔が緊張に包まれる。「今回は7組の63号と84号です。おめでとう」室内に消沈のため息と称賛の声が広がる中、やっぱりか、と顔を下に向けた88号が、ローブの人物の前に進み出る。「先生、私も結構やれたと思うんですけど……」「フフ 監視者はしっかり見てましたよ。あなたは焦らず周りをよく見てから行動しなければなりませんね」「ちぇっ」88号が口を尖らせる。そして『先生』は、63号と84号に、うやうやしく取り出した銀色に輝くメダイユを手渡した。ジグラトの訓練生は、メダイユを5つ集めることで一人前と認められる。84号は初めて受け取るそれを、少し蝋燭の光にあててキラキラとさせてみたが、特にそれ以上の興味は示さずにポケットにしまった。一方、63号はメダイユを大事そうに両手で握り締めていた。「……あとひとつだ」そして、両手の中の輝きをじっと見つめる。「あとひとつで……そうしたら……」その夜、4人は部屋の窓の鉄格子から覗く、すでに中天を過ぎた月を眺めながら話しをした。「あとひとつメダイユを貰ったら、63号は壁の外にいっちゃうのね」寂しそうにつぶやく88号。一人前と認められた訓練生は、この壁と乾いた砂漠に囲まれた町を出ることを許され、外の世界で経験を積み、いずれ真のジグラドの戦士となる「最終試験」を受ける権利を得るのだ。「そうだな。でもすぐに新しい子が来て、また4人に戻るさ」憧れと寂しさを綯い混ぜた話題に沈黙が落ち、重い空気を晴らそうとするかのように72号が新たな話題を振る。「みんなは、壁の外に出たら何したい?」薄暗がりの中で、63号の表情が少しだけ強張った。しかし、すぐに普段の様子に戻り、柔らかな声で答える。「そうだな……世界中、色んなところを見て回りたいかな」「あ、じゃぁ私も一緒にいくわ。私もメダイユ集めてすぐにここを出て見せるから、待っててよね」「はは、88号が一緒だったら賑やかそうだな」「72号はどうなの?」「あたしは……たくさんのお花を見てみたい」「花? 花って、あのたまにちょこちょこ生えてる小さくて白いやつ?」「うん。ここは渇いた土地だから、花っていうと町で見かけるあれしかないよね。けれど、壁の外にはいろいろな色や香りの花があるんだって。あたしは失敗ばかりだから、いつ出られるか分からないけどね」「花ねぇ……84号は……さっきから何してるの?」見ると、84号は月明かりを頼りに、63号から貰った薪で何かを彫っていた。それは、小さな猫の人形だった。「わっ! かわいい! それちょうだい?」「…いやだ」「なによ ケチ」むくれる88号を63号がたしなめる。「88号、それは彼の大事な“心の儀式”なんだ。オレはここ長いからさ、そういうのも必要だって解るんだ。だからそれは彼に、な?」「……ふーん。いいわ、63号がそういうなら」その夜は、猫が彫りあがるまで、皆いつもより少しだけ遅くまで話をし、84号は彫り上げた小さな木彫りの猫を抱きしめて眠った。新たな任務の日が来た。その日、72号は先日腕に受けた傷が悪化し、高熱を出してしまっていた。「どうする…? 任務は絶対だし…」「……3人で……行ってきて」弱々しい声でそう言う72号の目を見つめ、63号が言った。「ダメだ。一緒に行こう」逡巡する72号に、厳しい視線を向ける63号。「……やっぱり行けない 足手まといになっちゃうもの」「ねぇ63号、72号ひとりくらい別にいいんじゃない?」88号の言葉に答えず、72号を見つめ続ける63号。しかし72号は何かを避けるようにその視線から目をそらし、黙っている84号に言った。「…そうだ、84号。よかったら……花を摘んできてくれるかな」その言葉に、84号は何か違和感を感じたが、その正体がはっきりとせず、ただコクリとうなずいた。その日は、やはり3人だったせいか、他の組に後れをとり、誰も「優秀者」にはなれずに終わった。3人が部屋に戻ると、そこに、72号の姿は無かった。「先生、72号はどこに行ったのですか?」訪ねる88号に『先生』は告げた。「あの子は神の国に行きましたよ。あの子の右腕は壊疽を起こしてました。あれでは崇高なジグラトの使命は果たせませんからね」呆然とする3人――。「そっか……花 摘んできたんだけどな。でも神様の国に行けたんだから72号もよかったよね」しかし、63号は答えず、72号のベッドを見つめて立ち尽くすのみ――84号は、そんな63号が拳を奮わせて握る、野花の束を見つめていた。ふと84号が顔を上げ、63号に尋ねた。「……花は、殺しても血がでないんだね。初めから死んでるのかな?」「……どうかな。もしかしたら、花は摘まれることがわかってるから、血が出て痛くないように初めからそうなってるのかもな」そう言って、63号は手に持った花をそっと72号のベッドに置いた。しばらく後、新人が補充されずにいた7組は、再び3人で新たな任務へと出ることになった。その途中、63号がふいに立ち止まった。ただでさえひとり足らず、急がなければ標的を見失うというのに何事かと、残りのふたりがいぶかしげに首をかしげる。しかし、63号の顔に浮かぶ決意の表情は、今から発せられるであろう言葉の重みをありありと表していた。「なぁ、二人とも、このまま……壁の外まで行ってみないか?」突然の言葉に戸惑う二人。88号が気を取り直し、笑いながら答える。「ダメよ。訓練生は外に出れないの知ってるでしょ?」しかし、63号の真っ直ぐな眼差しは揺らぐことなく、空気を次第に緊張に染めていく。「……それに、63号はあとメダイユひとつで外に行けるじゃない」かすかに震える88号の声を遮るように、短剣の柄に伸びる63号の手――「もう限界さ……それに次まで生きていられるかなんて……」そのまま、ゆっくりと後ろに下がる63号。「行っちゃダメ! 行ったら……殺さなきゃいけなくなる……」63号は、音もなく短剣を抜く――瞬間、63号の足元へ放たれる84号の投剣。その動きは、心や理性とはかけ離れ、悲しい程に自動的で――それを見た63号は、困ったような顔で笑った。「そうだよな……オレ達はそういう風に作られてる。だから、できればメダイユを集めて一人で行きたかった」「……帰ろう、63号」悲しげな目で訴える84号――しかし、63号はその視線を断ち切るように短剣を構え直す。「ジグラトは…おかしい。72号はジグラトに殺された……お前らが来る前にいた奴も、その前の奴らもみんなだ」「63号……そんな事口にしたら神様の国に……」「はは……72号がなんで花を摘んできて欲しかったかわかるか? 自分が殺されることがわかってたからだ。自分の死に、花を手向けて欲しかったからだ」「でも、先生は……72号は神様の国に行ったって……」「そんなの……行けるわけないだろ」63号の顔が、悲しみとも笑顔ともつかない奇妙な形にゆがむ。「……オレたちは 人を殺してるんだ」言葉が、静寂を呼び込む。「……仲間が死んだら悲しいだろ? 死ぬって……殺すって、そういうことだろ?」「でも……!」63号は哀れむような目を88号に向けた。「なぁ、88号。なんでお前は人を殺していつも普通に笑っていられるんだ? オレは気付いたんだよ――それはすごくおかしいことなんだぜ?」88号の瞳が大きく見開かれ、動きが止まる。同時に、ドゥッと仰向けに倒れる63号。見ると、その喉には冷たく光る銀の針が――二人が振り返ると、すぐ近くの屋根に、黒い外套に身を包んだ『監視者』が立っていた。「それの言葉に耳をかすな。それは今、“異端”に堕ちた」63号は何かを言おうとしたが、ヒューヒューと息が漏れるだけで声にならない。そのまま63号は、84号に目を向け、弱々しく自分の胸に手を当てた。命を断ってくれ――84号には、彼がそう言っていることが解った。しかし、何度もやってきたその行為が、なぜか手が震えてできなかった。じわりと広がる赤。63号は諦めたように地面の一点を見つめた。視線を追う84号。その視線の先にあったもの――風に揺れる、小さく白い、花――あぁ、どうせなら、痛みを知らない花だったらよかったのに――。84号は目をつむり、そっと投剣を63号の胸へと下した。訓練所へ帰ると、『先生』が二人にメダイユをくれた。「なんで……」「あなた達は、異端に堕ちた友の魂を救い神の国に送りました。これはとても尊い行いです。遥か昔……遠い土地で、私も友に同じように魂を救ってもらいました」先生は懐かしそうに首をさすりながら言った。その夜、二人だけになった部屋には、84号が薪を彫る音だけが響いていた。「なんでかしら……63号が死んだだけなのに、なんだかおかしいの。私、そんなに嫌だったのかしら……?」抱えた膝に顔を埋める88号。ふと、木を彫る音が止み、84号が何かを差し出した。「これ…やるよ」それは、木彫りの猫だった。88号は、ぼうっとそれを見ていたが、そっと人形を受け取ると、両手で抱きしめ、声を搾って泣いた。その日から、88号は笑わなくなった。感情を表に出すことを憚るように、襟で顔を隠して――。月日が過ぎ、二人の背があの少年と同じ程になった頃、二人は共に5つ目のメダイユを授かった。「今期はあなた達が残りましたか……多くの同士が神の御許に旅立った中、あなた達だけが使命を果たす事を許されました。やはり、その紅い瞳は――」しかし、『先生』の語る言葉を聞く二人の目には、何の感情の色も無く――。「今日よりあなた達は獣から人へ… アサシン となる。掟に従い人の証『名』を授けましょう。それはあなた達の運命とジグラトの畏怖を託すもの。多くの者は強靭な武器や、伝説の魔獣から名を貰います。さぁ、好きなものを言いなさい」しばらく考えた後、84号が小さな声で呟いた。「……花がいい」「――花?」「私も…」88号が下を向いたまま続いた。「花がいいです…」『先生』は少し首をかしげたものの、特に気にする風もなく儀式を続けた。「いいでしょう。では――ジグラトの祖霊たる異邦の神・断罪の天使に捧げ名を授ける――ラ・84号――其の名は、紫の花――アズーライ・88号――其の名は、赤き花――イージア」その夜、二人は初めてあてがわれたそれぞれの個室から月を見ていた。一人で眺める月の光は、4人で眺めたあの日の月より、なんだかとても冷たく、悲しい感じがした。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/929.html
第一章 使い魔は暗殺者 中編 リゾットとルイズが歩いて城に戻ると、すでに次の授業は始まっていた。 ルイズは渋々ながら使い魔を引き連れて次の授業に出席しようとしたが、リゾットはそれを聞いてあっさりと首を振った。 「悪いが、仲間たちの様子を見に行きたい」 その言葉遣いにルイズはご主人様に対する礼儀がなってない! と叫んだが、リゾットは何処吹く風といった様子だったので、まあしょうがないわね、と許可を出した。 何しろ、これ以上遅れたら教師にどれだけ怒られるか分からない。 ルイズは近くを歩いていた黒髪のメイドに声を掛けると、リゾットを救護室まで案内することと寮の自分の部屋の場所を教えるように言った。 ルイズと同じ年頃のメイドはそれを礼儀正しく承ると、リゾットを連れて救護室へと向かった。 話は少し遡る。 まだリゾットとルイズが草原を歩いている頃、コルベールによって運ばれた六人のうちの一人が目を覚まそうとしていた。 トリステイン学院の救護室はかなり広い。 戦争が起きた場合、この学院も砦として活用されるので、大勢の兵士を収容するためなのだが、平和なときは無駄な広さである。 しかし、今はコルベールが連れてきた六人の奇妙な平民たちが眠っていた。普段使用しないベッドにもシーツを敷き、布団をかけて昏々と寝ている。 水のトライアングルメイジである治療師は全員に外傷が無いのを確認し、目が覚めたときの説明役のために椅子に座る。 地方の小貴族の三男坊だった彼は、一応貴族ではあるが、領土は持ってない。 領土がないということは、職が無いということなので、働かなければいけない。 けれど、この職が中々見つからない。実力の無いメイジだと門戸は狭いし、やっと就職できたとしても給料は安い。 そのせいで危険だけれども金になる傭兵や泥棒などになるメイジもいる。 国はそんなメイジを貴族の恥さらしと呼んで必死になってとっ捕まえようとしているが、そんなことをする前に給料上げた方がいいんじゃないのか、と彼は思っている。 ちなみに彼は水のトライアングルであったし、治癒魔法に優れていたのでけっこう門戸は広かった。 そんな中でこの学院の治療師を選んだのは年老いても出来そうな仕事だったからだ。それに、子供たちと触れ合う事も楽しかった。 そんな彼も六十の半ば。そろそろ退職時期かと考えていた。けれど後任の治療師が来ないので今に至る。 (オスマン学院長もそろそろ誰か採用してくれんかのー。この歳だと患者をベッドに寝かせるのも一苦労なんじゃ) コルベールが手伝ってくれたからどうにかなったものの、六十代の老人には少々骨の折れる仕事だった。 何しろ全員屈強な男たちだ。一人だけ女のような奴がいたが、しっかり筋肉はつけているようで、中々持ち上がらなかった。 (にしても、奇怪な格好だわ。最近の平民の間ではこんな服が流行っとるのかの。見たことの無い材質もあるようだし……。特にあの片目を隠すのは最先端流行ファッションとかいうやつかの?) 治療師は一番奥のベッドに寝ている男に視線を移す。 最初は女だと思った平民だ。 ちゃんと見ると男だと分かるのだが、他のがっしりとした骨格の男たちに囲まれると、アレ? となる。 奇妙な対比である。 しかし、彼らが運ばれてからすでに三十分ほど経過しているが、誰も起きない。 治療師は少し退屈してきたので、自室から本でも持って来ようかと腰を上げた。 と、そのとき、 「……う……うぅ……?」 眠っている一人が僅かな唸り声を上げた。 見れば一番奥のベッドで横になっていた妙な目隠しをつけた男がもぞもぞと動いている。 治療師は驚き、彼にしては早いスピードで側に近寄った。 「おお、目が覚めたかの?」 枕に顔を擦りつけ、ごにょごにょと何かを口にしている男に、治療師はそう尋ねた。 「…………ん? 何だ、ここは……。オレはいったい…………はっ、蛇だ! 蛇が!」 すると、声に反応して目を開けた男は突如として上体を起こして叫んだ。 治療師はそれを避けようとしてひっくり返りそうになったが、後ろの壁に手をついて何とか体を支える。 「お、落ち着きたまえ。ここに蛇は居らんよ。ここはトリステイン魔法学院の救護室じゃ」 「って、ここは駅じゃない? テルミニ駅にはこんな石で出来た部屋はないはずだ……。 ということは、何者かに運ばれたという事か? ブチャラティの奴らではないな……。 ボスの配下か?」 が、男は治療師の声が聞こえていなかったらしい。 ブツブツと独り言のような声で早口に何かを喋っていた。 治療師はこの平民が『サモン・サーヴァント』で呼び出されたことを思い出して、男の混乱に納得する。 そうして、もう一度声を掛けた。 「ここはトリステイン魔法学院だよ。 君たちは生徒の『サモン・サーヴァント』によって呼び出されたんだ。 ここまではミスタ・コルベールが魔法で運んできてくれたんだよ」 ぴくっ、と男の肩が揺れた。どうやら今度はちゃんと耳に届いたようだ。 治療師はこれで一安心と息を吐きかけて、 「トリステイン魔法学院? 『サモン・サーヴァント』? 魔法で運んだ? …………どういうことだ? 答えろ! お前は誰だ?!」 ぎょっとした。落ち着くどころか益々興奮した男が治療師の胸倉を掴んで喚く。 だらだらと汗を流して、眉は吊り上がり、目は爛々と輝き、唇の端は捲りあがっている。そのあまりの剣幕に治療師はひぃっと、小さく悲鳴を上げた。 怖すぎる。左目だけがこちらを睨んでいるのも怖い。 杖は職務机の脇に立てかけているので魔法を使うことも出来ない。 「答えろって言ってるだろ?! ここは……、ここは……、魔法が存在する世界なのかッ?!」 「…………………………………………………………………… ……………………は?」 ああ、わしの人生オワタと、心の中で始祖ブリミルに対する祈りの言葉を唱えていた治療師は、 続いてとても嬉しそうに発された間抜けな質問に、心底気の抜けた声を出した。 プロシュートはぼんやりとした気持ちでどこかに立っていた。どこかは分からない。 というより、足に何かが触れている感じがしない。 黒で塗りつぶされた空間の中に、曖昧な感覚のまま立ち尽くしていた。 自分は死んだはずだ。と、プロシュートは思った。 ブチャラティと戦い、列車の外に飛ばされ、ブチャラティの策略にはまり落とされた。 それでもペッシを援護するために車輪に捕まり、ザ・グレイトフル・デッドを使っていたが、 段々意識が薄れていきとうとう…………途切れた。 ――ペッシは娘を手に入れられたのだろうか? メローネとギアッチョはどうしているのだろうか? リゾットはボスを倒せたのだろうか? 残された仲間の事が気に掛かるが、プロシュートには確かめる術も無い。 ただ、この漆黒の闇に囲まれていることしか出来ない。 それにしても、ここはどこなのか。天国でも地獄でも無いことは確実だが。 死後の世界とはこういうものなのだろうか。 何もすることが無いので、プロシュートはこの場所について考える。 けれど、すぐに堂々巡りするだけだと気付いて、別のことを考えようとした瞬間、 ぐいっと何かに引かれる感触がした。 ――何だ? プロシュートは錆び付いた歯車のように働かない思考で呟いた。 その間にもプロシュートはぐいぐいと引っ張られていく。 上か下かは分からないが頭の方向へと、何かがプロシュートを運んでいくのを感じる。 それと同時にプロシュートを囲っていた闇が薄くなっていった。 頭上から光が射してきたのだ。 それは瞬く間にプロシュートの周りの闇を払うと、さらに輝きを強くする。 ――くっ、目が! プロシュートは反射的に顔を庇った。 そうして、あまりの眩しさに目が開けられなくなったとき、目が開いた。 「……か! ディ・モールトッ! ディ・モールトッ! よいぞぉッ!」 目が覚めた瞬間、プロシュートは自分がベッドに寝ていることに気付いた。 白い、清潔そうなシーツだ。あまり使われて無いらしく、生地は少し硬い。が、手触りはよかった。 「…………またメローネがゲームをやってるのか。 普段は冷静で頭脳派なんだが、ジャッポネーゼが絡むと途端に人が変わるからな……。 それがなけりゃあイイ奴なんだが……」 起き抜けに聞こえたメローネの歓声から、ここがチームの家だと判断したプロシュートは 二度寝をしようともう一度毛布を頭から被り――、 「ちょっと待てぇぇぇぇぇッッッッ!!!!! これはどおぉぉいう事だあぁぁぁぁぁッッッ!!!!」 有らん限りの音量を振り絞って叫んだ。 そうして、それを耳にした残りの仲間たちが、 「なんだ?! プロシュート! 敵か?!」 「おいおい、プロシュートォ。いきなり叫ぶなよ。煩いだろぉ」 「プロシュート兄貴! なんかあったんですかい?!」 「うっせぇぇなぁプロシュート。オレは眠いんだ。起こすなよ」 と、プロシュートとの関係がよく分かる言葉を発してくれた。 ホルマジオとペッシは非常事態だと思い、勢いよく上体を起こした。 イルーゾォとギアッチョは耳を塞いで眠る気満々の姿勢だ。 そんな二人の反応――ホルマジオとペッシは飛び起きたのでよしとする――にプロシュートはギアッチョよりも盛大にブチギレた。 「これが叫ばずにいられるかぁッ!!! なんでオレは……オレたちはここに居るんだッッ?!! オレたちは……それぞれに別れてブチャラティたちを追っていたはずだ!!!」 その言葉に、ベッドの上に居た六人は、この状況の異常さに気付いた! 「そうだ! オレは……ナランチャの野郎に殺されたはずだ!」 「オレはあの三人と戦って変なウイルスに……。 クソッ、もう少しで鍵を手に入れることが出来ていたのによぉ!」 「お、オレは兄貴の仇を取ろうとしてブチャラティにバラバラにされたはずなのに……。 な、なんでこんなところに?」 「オレは……、ミスタの野郎を殺そうとして、新入りのヤツに殺された……。 クソクソッ! あと一歩だったのによ!」 「オレはブチャラティを列車から落とそうとして逆に落とされた。 最後の力でザ・グレイトフル・デッドを使ったが……。駄目だったと言うわけか」 五人はベッドから飛び降りると、輪になって互いに自分たちが失敗したときのことを語り合った。 そして、全員が語り終わると同時に、部屋に沈黙が落ちる。 自分たちは負けた。それならばリーダーは? 数少ない情報でボスを倒せたのだろうか。それとも、死んでしまったのか。 「…………とにかく、なんでオレたちはこんなところにいるんだ? 全員、別々の場所で死んだっていうのに、こんなところに揃ってるのはおかしいだろ」 まるで通夜か葬式のような雰囲気になった気分を吹っ切るためにプロシュートは強引に話を切り替えた。 最初に気付いたせいか、当初の驚愕は比較的治まっていた。 混乱して喚いていても、任務の失敗を思い出し沈鬱としていても、意味は無い。 今やらないといけないことは、この状況を把握してリーダーのところへ帰ることだ! 五人は戸惑い揺れていた瞳に決意と覚悟を宿すとぐっと表情を引き締める。 そうして、互いの顔を見合わせた――ところで、メローネがいないことにようやく気付いた。 「おい、メローネのヤツはどうした?」 「まさかあいつだけここに来ていないとかいうオチじゃねーよな」 「そ、そんな……。メローネだけ居ないなんてこと……」 「チェッ、あいつだけ仲間はずれってことか?」 「いや、オレはあいつの声で目が覚めたんだ……」 仲間が一人居ない。そのことに妙な不安を感じて四人は顔を見合わせる。 が、一人プロシュートだけは確信をもって周りを見渡し……、 「おお! すごいぞ! こんなことも出来るのか!」 「ほっほっほっほっ。 これは基本の基本である『錬金』で、位が高いメイジならさらにすごい事も出来る。 わしはトライアングルメイジの中級クラスぐらいの実力だからそうはできんがな。 それに、『錬金』を得意とするのは土のメイジだから水のメイジであるわしはあんまり使用せん」 「なるほど、なるほど。相性というものだな? ふむう……しかし魔法というのは貴族の血を引かないと使えないのだろう? それなのに全てのこういった作業を魔法だけで行っているのか?」 「うむ。メイジは数が少ないからね、非効率ではある。 それに、こういった仕事は給料が低い事もあって専門的に行うメイジはほとんど居らん。 自分が必要だと感じたときに自分が必要な分だけ作るというのがメイジの基本になっとる」 和気藹々と語り合うメローネと、黒いローブを纏った変な老人を見つけた。 こちらがすごい覚悟をした後で、少々盛り上がっていたところなので、そのギャップはかなりすごかった。 どれくらいすごいかというと、 シリアスなシーンでスマイル全開でタップダンスを踊るリゾットを目撃してしまった! ぐらいの衝撃である。 「……………………………………………… ………………………………………………」 「……………………………………………… ………………………………………………」 「……………………………………………… ………………………………………………」 「……………………………………………… ………………………………………………」 「……………………………………………… ………………………………………………」 さっきとはまた違った意味で不穏な空気が五人を包む。 ペッシは、どこからともなくゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴという音や、 ド ド ド ド ド ド ド ドという音が聞こえてきた気がした。 なんだか周りに居る仲間や兄貴の顔が大変な事になっていっている。 反対に自分はどんどん脂汗を流しているような気がしてきた。 (プロシュート兄貴ィィ~~~~~ッ。目がイってるぜ~~~~~ェェッッ) ペッシは後退る。ブチャラティとの戦いでマンモーニから脱却したとはいえ、 まだまだ経験の浅いひよっこでしかない彼には、この本物たちの放つ気配は重い。 「なるほど! なるほど! ディ・モールト! ティ・モールト! よく分かったぞぉ! だからこそ貴族は平民を支配できているのだな! そういった科学技術を独占する事で!」 「そうとも言えるな。平民には鉄を精製したり火の秘薬を作ったりすることはできん。 ところでカガクとはなんなのだ?」 「あっ! あっ! それは秘密だな。 オレたちにとって重大な秘蘊(ひうん)だからだ。タダで教えるわけにはいかないものだ」 そんな彼らとは正反対に、メローネは至極楽しそうに会話を続けている。 ああ、こんなに楽しそうなメローネはベイビィ・フェイスの息子を操作しているときか、ジャッポネーゼ絡みのときだけだ。 そう、老人と語り合う彼は、とても、とても、とても――――幸せそうであった。 ブッチィィィィ―――――z______ンッ!!!!! その瞬間、何かが切れる音をペッシははっきりと耳にした――と思った。 「めぇぇぇぇぇぇろぉぉぉぉぉぉねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ペッシを除く全員が、声を揃えて怒鳴る。 あまりの大音量に毛布が浮かび上がった。枕も宙に浮く。ベッドも床から足を離した。 地球のギネスブックには、『閉店だ!』と叫んだ酒屋の亭主が窓ガラスを割った記事があるが、 そのレベルの大声である。ローブを着た老人は漫画のように飛び上がった。 しかし、メローネはふんふんと鼻歌を歌いだしそうなくらいの上機嫌な空気を撒き散らしつつ、 「オマエたち起きるのが遅いな。寝てばっかりいると脳が溶けるぞ」 と、のたまった。 ――ちなみにそれに対するプロシュートたちの返答は――スタンドでの容赦ないオラオララッシュであった(人、これを自業自得と言う!)。
https://w.atwiki.jp/aohitolov3/pages/78.html
special episode――from “Ver3.5 アルファレネゲイド/エラン”◆暗殺者たちの夜 『存在の刃』◆一歩、また一歩。脚を引きずるようにしながらリータは暗い廃墟の階段を登っていった。吐く息はまだ荒い。しかし、目に宿る光は強い。先ほどの戦いで必殺の技を立て続けに放った所為で、すでに足の筋繊維はボロボロになっていた。しかし、それでも行かねばならなかった。もうあの兄弟たちの戦いは終わっただろうか…あの弟は、救われただろうか…先ほどまで、リータは“フクロウの女神”に頼まれ、かつて聖騎士だった男を闇から救い出すために戦っていた。そして、闇の呪縛の源に楔を打ちこむと共に力尽きたリータは、男の兄に安全な場所へと運ばれ、寝かされていた。今、聖騎士たる兄は一人、凶悪な力を手にした弟の前に立ちはだかっている。程なく意識を取り戻したリータは、その背中をしばらく見つめ、「――おまえなら取り戻せるよ」そう呟くと、そっと立ち上がりその場を後にした。きっと、もう大丈夫だろう。盾も、鎧も、身を守るものをすべて失い、それでもなお立つ聖騎士――ニールの背中は、未来への希望を雄弁に語っていた。もし、万が一のことがあったとしても、その時はきっとあの人が――今は、それより……。リータはきつく口を結び、階段の上を見上げた。やはり、“あの気配”がある――。戦いの最中、リータはずっと感じていた。視線――じっとりと舐めまわすようにリータに熱く絡みついていたそれは、彼女のみが気づくように送られ、リータを呼び続けていた。もし、この呼びかけを無視するようなことがあれば、わかっているな?――そんな強い脅迫と共に。そして間違いなく、この先にはその視線の主がいる。くぅっ、と小さな苦鳴を漏らし足を押さえつつ、階段の上に崩れ落ちた石柱を越えると、天井が開け、眩しく大きな青色が目に入ってきた。いつの間にか雨が上がり、岩石地帯であるこの地方特有の高く澄み切った青空が広がっている。眼下の街からはまだ雨で燻った煙が立ち昇っており、この廃墟の屋上だけが、すがすがしい空気の漂う別の世界のようだった。その世界にひとつ、赤黒いシミのような影があった。影は、風に乱れて顔にかかった金色の前髪をかきあげると、その顔をリータにみせつけるかのようにしながら、青空によく合うさわやかな笑顔を浮かべた。「やぁ、久しぶりだね、“アサシン”」リータはその姿にさして驚いた風もなく、「お前だと思ったよ――」そう言って、無駄ではあろうが極力消耗を悟られないように、痛みを押し殺しながら影に近づいていった。「――“チェイサー”」チェイサー――追跡者と呼ばれる、かつてリータが所属していた『ザフー暗殺者ギルド』の始末屋。“前にいた世界”で紅蓮の王の暗殺に失敗し、ギルドを追われる身となったリータは、多くの刺客を打ち倒してきた。幾人もの、アサシンを殺すためのアサシン――“処刑人”を退け、その頭目である3人のチェイサーを闇へと屠った。しかし、この左頬に傷を持つチェイサーだけは倒すことができなかった。幾度戦おうとも、倒すことはおろか、手傷を負わせることができたのすら、初めてまみえた時のあの頬傷ひとつのみ。むしろ剣を交える度、彼女の目に浮かぶ異常なまでの執念は燃え上がり、リータを圧倒していった。このような異世界にまで自分を追って来るとしたら、もはやこの者を置いて他にはいないだろう。チェイサーは、心底感慨深げな表情を浮かべてリータに微笑みかけた。「お前なら、来てくれると思ったよ」「……おまえにあの兄弟の戦いを邪魔させるわけにはいかないからな。それに、これは私の問題だ」「本当に、本当に嬉しいよ。最後に逢ってからどれだけの時が経っただろうね……100年、いや、それ以上かな」「……?」「ああ、わからないよな……私にも色々あってね……」リータは双月剣を手に取り、チェイサーの言葉を打ち切った。しかし、チェイサーはその所作すら愛おしそうに眺め、微笑を崩さずに尋ねた。「それで、思い出してくれたのかな?――『リータ・パティス』」リータは眉をひそめた。なぜ彼女がその名を――アサシンに調整される過程でギルドに奪われた彼女の「本当の名前」を知っているのか。名を思い出したあと、リータはすぐに異世界へと発った。この世界においても、その名は信じられる者にしか明かしてはいない……。「……その顔、まだ完全に、というわけではないのか?」困惑した様子のリータを見て、チェイサーはひどく残念そうな顔を浮かべる。「ひとつ聞かせてくれ」「……」「――私は、誰だ?」「……何のことだ?」リータの返答に、チェイサーは空を仰ぐと、目を閉じ腰の赤い半月刀を引き抜いた。「……そうか、なら思い出してもらわなければな」紅い軌跡が宙を走った。リータは一歩も動くことなく、双月剣でそれを弾き返す。それを見たチェイサーは、ふんと鼻を鳴らし、ワイヤーで回収した半月刀を再び飛ばす。続けざまの斬撃を、またも動かずに対処するリータ。双月剣とぶつかり合った半月刀から赤い火花が飛び散りリータを包む。「やはり体は限界のようだね。 ……私はね、全てを完全に“思い出した”お前を殺したいんだ。その為に、長い時間をかけて準備してきたし、多くのしかけを施した。この“赤い刃”もその一つさ――だから、早く思い出してくれよ」三度チェイサーが半月刀を振りかぶる。リータは自身の足に意識を向けた。もはやほとんど感覚はないが、あと一度の『双影斬』を放つことなら――その後は立っていることすらできなくなるだろう……機会は一度、逃すことはできない。リータはチェイサーの動きに注意しながら足に力を込めた――が、それはピクリとも動かすことが出来なかった。「……!?」「ああ、ごめんよリータ。“それ”はお前の体の所為じゃない。私のこの『服従の赤い枷』がお前の技を封じているのさ」チェイサーの言葉にかぶせるように飛来する半月刀。今度は間に合わず、赤い軌跡がリータの両腕を削る。「…ぐっ!」その時、リータの頭の中に、何かが入ってきた。血煙のように広がる紅いイメージ――。「どうだ? 何か思い出したか? …そうだ、お前はアサシンだ。ザフーの恐怖の象徴だ。いつの間にか、アケローンを救った紅蓮の軍団のひとりを気取っていたようだが、お前の手は何色だ? 血の赤が見えるだろう? ほら、もっと思い出せよ…おまえの根源を!」さらなる赤い刃がリータを襲う。致命傷を与えることなく軌跡が体を削っていくと共に、リータの脳裏にイメージが流れ込む。紅い光――それは、かつて奪ってきた命だ……顔……たくさんの顔、顔、顔。リータはチェイサーを睨み付けた。「チェイサー…刃に何を仕込んだ…?」チェイサーはリータの問いかけに、さも愉快そうな笑みを浮かべる。そして攻撃の手を止め、手に持つ赤い半月刀をぶらりと揺らしリータに見せつけた。「ふふ、この刃の“紅”はね、アルカナ――『紅蓮の力』の紅なのさ。なぁリータ、お前はどうやってその名を思い出した? ふと、自然に思い出したのか? それとも、あの『紅蓮の王』との絆のおかげだとでも? ……それは違うよ。大きな勘違いだ」「……何を…」「ギルドの封印術は完璧だよ。あれは“忘却”というよりは“消滅”だ。私もこの世界で見よう見まねで試してみたが、あれほどの完成度には至らなかった。普通なら、あの記憶の封印は、たとえ死んで不死種へと身を変えても蘇ることはないだろう。そんな封印を破り、なぜお前は記憶の一部を取り戻せたのか――」チェイサーは鈍く真紅に光る刃をつつぅっと指でなぞる。「それは『紅蓮の力』に触れたからに他ならない。あの『紅蓮の王』の再生の力が、お前の失った記憶をも再生させたのさ」「……!」「だから私はこの世界でそれを探し続けた…ジグラトなんて組織を作ってね…そして見つけた。私は“そいつら”の『紅蓮の力』を目覚めさせ、吸い取り、この赤い刃に宿した。この刃に身を削られる度、お前に紅蓮の力が流れ込み、封印が破壊される度、お前の記憶は再生されていく――さぁ、早く思い出せ」嵐のような攻撃が再開される。「何故……そこまで私にこだわる……」「それを思い出せといっている――さぁ、“私は誰だ?”」リータの四肢を刃が通り過ぎるたび、頭に紅い瞬きがはじける――幼い頃、暗い地下の訓練場――優しく、恐ろしい司祭様の顔――キラキラした銀のメダイユ――そして試験――試験の時、誰かが隣にいた――そう、あの時――。「……そんな…オマエが…」身を削る赤い斬撃の嵐の中、リータは目を見開いた。その時、赤い半月刀が空中で弾かれた。チェイサーはそれをワイヤーで引き寄せ、「……相変わらず、背後を取るのが上手いですね。しかし今、私は忙しい、用事なら後にしなさい――」そう妙に丁寧な口調で言うと、細めた流し目を背後に送った。チェイサーの背後に、いつの間にか新たな赤い影が立っていた。「――イージア」チェイサーはそう、赤い影の名を呼んだ。「――探しました、『先生』」赤い影――イージアは、構えた短剣をピタリとチェイサーの背に当てていた。同時に、場の空気がざわりと揺れる。柱、壁の上、岩陰、あらゆるところに乱立するさらなる影、影、影。その手に握られた巨大な鋏――無数の処刑人が、廃墟の屋上を取り囲んでいた。「――チッ…」しかし、子飼いの助勢に対し、苦々しい表情を浮かべたのはチェイサーの方だった。壁上の処刑人達の一角、その十数名がゆらりと体を揺らすと、皆呆けた顔を浮かべ、次々に壁の下へと崩れ落ちていく。見ると、処刑人達が立っていた場所の空間が歪み、翼も、体も、何もかもが漆黒の巨大な天使の姿が浮かび上がる。《クックック……汚らしい…黄金の輝きひとつ感じぬ、知恵のない魂だ。こんな塵は、後で地獄にでも捨ててこようかね》笑う堕天使と、その足元に無言で立つ男の姿を見て、チェイサーは眉根を寄せた。「〈サマエル〉とは、ずいぶんな使い魔を手なずけたものですね――アズーラ」イージアとアズーラ、二人の姿を確認したリータは、ふぅ、と息をつき、イージアへと顔を向けた。「助かりました。マスター・イージア」「あなたが『レムギアの牙』を離れてひとりになった時、この人はきっと姿を現す――あなたの言った通りだったわね、リータ・パティス。危険な目に遭わせて悪かったわ」「いいえ、私が言い出したこと…ですから……」ふいに力が抜けたように倒れ込むリータを、いつの間にか側にいたアズーラが支える。「なるほど……追われていたのは私の方だったというわけか」チェイサーは、両手に構えた半月刀を下した。「それでふたりとも、私に何の用ですか? 繰り返しますが、私は今忙しい。お前たちの相手は後にさせてもらいたいのだがね」チェイサーは背に突き付けられた短剣にまったく動じることなく、ゆっくりとイージアの方を振り向いた。警戒したアズーラが静かに投剣を手に取る。イージアもまた、冷静に短剣の切っ先を上げ、チェイサーの喉元へと当てる。「先生、あなたを探していました――あなたはジグラトを皇帝軍に売り、姿をくらました。私はその理由を知りたかった――先生がリータに語ったこと、それが全ての理由だったのですか?」「ふぅ、聞いていましたか……そんなことを聞くために、この“聖なる邂逅”の邪魔を?」「……答えてください」チェイサーは目を閉じてもう一度ため息をつくと、すまし顔の仮面をはずし、凶悪な笑みを浮かべた。「答えを聞かなければ解らないのか? それとも“違う”とでも言って欲しいのか? まったく、いつまでたっても自分で物を考えようとしない木偶だ……まぁ、そのように造ったのだがね」チェイサーは喉元の短剣を指で挟み押しのけると、イージアの顔を覗き込むように顔を突き出した。「その、通りだ」イージアの短剣を持つ手に力がこもる――が、チェイサーはわずか二本の指でそれを抑え込む。「お前の命を幾度も削り、その度に漏れ出る紅蓮の光をこの『赤い刃』に浴びせ続けた。質…というのかな?それでも足りなかったのでね、直接あの皇帝陛下のアルカナを譲り受けることにした。皇帝にジグラトを売り込むのに、お前の〈死獣〉はずいぶんと役に立ったよ。おかげでこの通り、“完成”した」チェイサーがもう一方の手で、半月刀をちらつかせる。「では、私たちの信じた『聖戦』は……世界を作りかえるジグラトの理想は……」「……本気で聞いているのか? そんなものは……いや、恥ずかしながら告白すると、初めの内はそれも面白そうだと思ったのは確かだがね。でもね、よくお聞き、イージア。お前も、ジグラトも、今日、この日のために造った道具なのだよ――だから、道具らしく、先生の邪魔はやめなさい」チェイサーの言葉に、イージアがぎりりと強く歯を噛みしめる。「あなたは……あなたを信じて死んだガルムや――63号たちにも同じ言葉を投げるのか?」「63号……何の63号だ? 覚えがないな」瞬間、イージアから峻烈な怒気が弾け、神速の短剣が舞った。しかしチェイサーは半月刀で難なくそれを受けると、その勢いのまま間合いの外へと飛び退る。「マスター!」痛む体を押して立ち上がろうとするリータをアズーラが止める。「…一人でやらせてやってくれ。これは、あいつにとって必要な戦いなんだ」じりじりと間合いを測りながらチェイサーと対峙するイージア。しかし、かつての弟子に後れを取るなどとは露程も思っていないのか、その笑みは崩れない。「私は……私たちは命を賭してあなたに従い続けてきた……」「当然だろう? 私はお前たちの“創造主”だ」チェイサーの言葉と同時に、イージアは呼吸を止め、赤い閃光と化し一気に間合いを詰める。軌道を読ませない、体を捻りながらの短剣左右連突――しかし、それを全て半月刀で受けきられると、膝を突き上げて相手の腕ごと守りの半月刀を跳ね飛ばす。そのまま後方に回転しながら、もう一方の脚で顎へと蹴りを見舞う――が、それも笑みと共に、わずかな動作でかわされてしまう。しかしイージアはその所作を確認するや否や、軽く足首を倒し、チェイサーの顔面へとつま先から仕込み針を撃ち出す――これは仕留めたか――だが針は、笑うチェイサーの歯にがちりと噛み止められていた。再び間合いを取るイージア。チェイサーが、咥えた針を吐き捨て、口を拭う。「さすが、元『イレイカ』だな。だが、所詮は全て私が仕込んだ技だ。お前では無理だよ」そして、高々と片手を上げると、沈黙を守っていた処刑人達が立ち上がる。「さぁ、もういいだろう。“邂逅”の続きをさせてくれ」勢いよく振り下ろされる腕を合図に、処刑人達が一斉に壁から飛び降りる。邪魔はさせないとばかりに、アズーラが瞬息の間に無数の投剣を放ち、空中の処刑人たちを次々と撃ち落とす。更に、サマエルが黒い嵐となってそれらの魂を奪い去る。しかし、既に人としての心を失っているのか――いや、もう既に人ではないのか――彼らはどのような傷を負おうと、仲間がどれだけ倒れようとも、恐れ、怯むことなくその屍を踏み越えて、止まることのない洪水のようにイージアへと襲い掛かっていく。次々と迫りくる処刑人達に巧みな体術で抵抗するも、数には勝てず、次第に押しこまれてチェイサーと引き離されていくイージア。チェイサーはその様子を満足気に眺めると、リータの元へと歩き出す。「リータ……やっとお前に逢えたんだ。全てを思い出したお前を……お前の中の、穢れる前の私の――“ぼく”の記憶を殺させてくれ。そうしてやっと、ぼくは何者でもなくなるんだ……そうでなくては……それを、誰にも邪魔させるものかよ」その時、イージアに向かって行った処刑人達の流れが止まった――次いで、紅い衝撃が廃墟を揺らし、大量の処刑人達が吹き飛ばされる。一同の視線がその中心へと向かう。見ると、そこに立ち、ゆっくりチェイサーの元へと歩くイージアの左目は、爛々と赤い輝きを放っていた。「…まずいな…」アズーラは、動けないでいるリータを抱えると、サマエルを一瞥する。《チッ、あの“冥府馬鹿”か… 助けがいるなら口に出して言えと言ってるだろう、アズーラ》そうごちると、サマエルは急ぎリータごとアズーラをひっつかみ、空中へと飛翔する。気炎を纏い、ゆっくりと歩き来るイージアの赤い瞳を見て身構えるチェイサー。「……あの状態でも“呼べる”のか。以前なら……少し、油断が過ぎたかな……」おもむろにイージアが立ち止り、すぅっと息を吸った――「プルートーーーー!」バウンと空気が爆発した。処刑人達を跳ね飛ばして出現する巨大な蒼い光。その光が象徴するものは地上に現れし冥府――蒼き、死獣。「ゴアアアアアアアアアアアア!!!」死獣が吠え、その体から全ての命、全ての現世を腐らせる蒼い瘴気が放たれる。倒れた処刑人達の体が腐り落ち、廃墟の壁、床、石柱までもが、死獣を中心にドロドロに溶けはじめる。広がる崩壊は廃墟全体に広がり、轟音と粉塵を巻き上げて崩れ落ちていく――。* * * *溶け落ちた瓦礫の山と化し、静寂に包まれた廃墟の中で立ちすくむ死獣は、奪う魂がほぼなくなったことを確認すると、つまらなそうに鼻をならし、蒼い燐光を残して消え去った。廃墟に残った影はひとつ――その側に、サマエルに掴まれたアズーラとリータが降り立つ。「無事か……イージア」「……えぇ」イージアは地面を見下ろしていた。その視線の先にあったのは、半身に瘴気の光を浴び、動けずに横たわるチェイサーの姿――。チェイサーもまたイージアを見上げ、無様な格好に似合わぬ笑みを浮かべる。「ふん……成長…したな……イージア。それで、お前は私に何を望む? 私を…どうしたい…?」「私は……知りたい。私の……ジグラトに育てられた私たちの、意味を」「……意味、だと……?」チェイサーは首を傾け、少し遠くに立つリータをしばらく見つめたあと、目を閉じた。そして――「――何の意味があるものか!!」――叫んだ。その声は、崩れた廃墟に響きわたり、その凄烈さは、瞬時、その場にいる者たちの心臓を掴み、締め上げた。「私たちに何の意味がある!! ギルドも、ジグラトも関係あるものか! 何の統一性も無く、所詮は生まれ育った環境で、心も、記憶も、何もかもが書き換わってしまうような不安定な生物だ! そんな者たちの意志にも、正義にも、倫理にも、理性にも、まったく意味などない!!」チェイサーの叫びが木霊し、遅れてやってきた静寂の中に、彼女の大きな呼吸だけが音を残す。そしてチェイサーは、胸を上下させながら穏やかに言った。「いいかイージア……人の意味なんてものは、全て“そうだといい”という、あいまいな希望から生まれるものなのだよ。全ては“存在を許されたい”だけの言い訳だ……だから皆居場所を求める。ただ誰かに“存在していい”と言われたいが為だけに、自分の置かれた環境に従った生を尽くす……惨めだが仕方がない……それが我々の本質だ」イージアは、熱に浮かされるように語り続けるチェイサーをじっと見つめる。「……だがね、私はギルドに造られ、皆が全てを忘れていく中、記憶を持たされた。はなから誰とも同じになれず、同じになれなかった者を消すためだけに存在し続けた。唯一同じであるはずのチェイサーたちも、お互いがお互いを殺すための存在だった……私は、誰とも違う“壊れもの”さ……孤独だったよ。そうして、ギルドにすら裏切られて、自ら死ぬこともできぬ体を与えられたまま異界に流され……100年……100年だ……この100年の孤独がお前らに理解できるか? こんな孤独に……意味などあると思うか?」遠く立つ、リータの拳がぐっと握られる。「私は、ただ私を知る誰かに存在を許して欲しかった……しかしそれは叶わなかった……そのうち、私自身すら“壊れもの”である自分を許せなくなった……自分が“壊れもの”だという記憶を消さなければ、私は私を否定し続けるしかない……そうじゃなくては生きて……いられない……」イージアは膝をつき――「それが、“あなた”なの……?」「……そう……“ぼく”だ……」――そっと目を伏せて短剣を握った。「……そう……あなたは私と同じ――なら、私が……」そして、ゆっくりとそれを振りかぶる。その様子をアズーラがじっと見つめ、リータが一歩、足を踏み出す。イージアの視線はチェイサーから動かない。短剣に力が籠められる――しかし、その手は振り下ろされることなく、イージアはそっと短剣を下ろした。「……いいえ、違ったわね。私は――もう誰かに存在を許されているもの」そう言って立ち上がると、「先に行くわ」とすれ違いざまにアズーラに目をやり、廃墟の外へと歩き出す。その姿を見てホッと安堵の息をつき、アズーラに頷きかけるリータ。アズーラもまた、リータに頷き返すと、チェイサーの前へと立ち、「先生、オレたちは行きます。この戦いの終わりは近い。オレは、あなたにさえ会わなければ……ずっとそう思っていました。でも、あなたに出会ったから、あいつの心を救うことができた……何故か、そうも思えます」そう告げて、イージアの後を追うように去った。残されたリータは横たわるチェイサーを見つめ、無言で立っていた。チェイサーもまた、何も語らず、空を見上げ続けた。しばらくして、リータはチェイサーの側に立つと、双月剣の片方を、そっとその傍らに置いた。「おまえも私も、アサシンとして多くの命を奪った。その罪は決して消えない。だからいつか、例えおまえの手でなかったとしても、私はこの命でその罪を償わなければいけないのだろうな――ただ、それはもう少し先であって欲しいと思う。私は、“あの人”を救いださなければならないんだ。それまでは――」そう言って、リータもまたチェイサーに背を向け歩きはじめる。「………」全てを吐き出したチェイサーは気力を失ったように、ただぼうっと双月剣に映る、痛む足を引きずり歩くリータの後姿を眺める。ふと、その姿がピタリと止まった。「追ってこい――エラン。私が生きている間は、お前の存在は私が覚えているよ」そして、双月剣の中のリータは姿を消した。薄い煙を上げ、チェイサーの傷が再生していく。しかし、もう彼女は立ち上がろうとはせず、ぼろぼろの両手で顔を覆うだけだった。「ふぅ……ふぐぅうっ……」そうしてひとつの戦いが終わり、星が瞬き始めた空には、ただ存在を取り戻した追跡者の嗚咽だけが響いていた。――fin
https://w.atwiki.jp/ansatusya/pages/20.html
【あらすじ】 暗殺組織「矛先」に所属していた有能な暗殺者ブーンはある日 高校に潜入しその高校の生徒である久遠と言う少女を抹殺せよとの任務を命じられる しかしそれは組織によるブーンが情に流されずに人を殺せるのかを試すためのテストだった。 全てが偽り、守ろうと決めた少女も組織の操り人形だと知ってしまったブーンは 潜入中の高校で友情を育んだ友達と決別し裏切り者としてブーンを追う組織から逃げる日々を送っていた 住処を転々とし暗殺者時代に培った技術で不正に金を引き出す、スリをするなどして生計を立てていたブーン ある日逃亡先の北海道で組織よりも早くブーンを発見したかつての組織の仲間から「アメリカにお前を求めている人がいる」との助言を得る 組織の呪縛から解放されるため、終着点を見つけるため 己の意思で戦う事に目覚めたブーンは単身アメリカへ渡るのだった -アメリカカリフォルニア州ロサンゼルス- ロサンゼルス国際空港 ( ^ω^)「ついに来たお」 ロサンゼルス、北米を代表する世界都市 観光都市としての年々繁栄を続け 豊かな住まいと娯楽、外国人でも生活し易い気候となんでもそろう便利さもあわせ持つ 中にはまだ治安の悪い街もあるようだが ( ^ω^)「取り合えずここから移動するお」 天候の影響で日本からニューヨークへ直接飛ぶことは出来なかった為 ロサンゼルスからニューヨークへ行く方法を探さなければならない ( ^ω^)「ウェスト・サイド・パビリオンまで」 ミ,,゚Д゚彡 「あいよ!」 僕は空港の出口の前に止まっている多数のタクシーの中の一台に乗り込んだ ( ^ω^)「………」 威勢の良い返事と共に運転手がキーを回し 気持ちの良いエンジン音を響かせタクシーは空港を出発した 遠ざかるにつれ空港のシンボル「テーマビル」が小さくなって行く ミ,,゚Д゚彡「兄ちゃん旅行かい?」 ( ^ω^)「ええ」 ミ,,゚Д゚彡「ここは観光客をカモにしようと目をギラつかせてる奴も多いから注意しなよ」 ( ^ω^)「はい、気をつけますお」 ミ,,゚Д゚彡「パビリオンに行ったらまずレストランでカリフォニア巻きを食ってからねぇ……ブツブツ」 ( ^ω^)「そうなんですかお」 などとお喋りな運転手と雑談を続けている内にタクシーはパビリオンへ到着した ( ^ω^)「ありがとうございましたお」 ミ,,゚Д゚彡「んじゃ楽しんでな兄ちゃん」 5ドルを払いやたら陽気だった運転手と別れ、僕はセンターの中へ入った 巨大ショッピングセンターだけあり広さ、店の多さ、人の多さは流石だ 三階建ての吹き抜け天井から射す日差しが眩しい 観光客と思われる集団もちらほら見かける ( ^ω^)「………」 僕は行き交う人々の顔、顔、顔に目を凝らした これは組織の尾行がない事を確認するためにも怠ってはならない ( ^ω^)「………」 僕はセンター内の人混みに溶け込むと、人を避け、かわしながら、わずかな間隙を伝って進み 人混みの外縁に出た所で急に立ち止まって背後に流れる人の動きのパターンに注目し つい先ほど目にとめた者がいないか、自分を見ている顔や目がないかとあたりをうかがった ( ^ω^)「…大丈夫みたいだお」 不審な顔や目は見当たらなかった 僕はその行動を二度も繰り返したのち、エスカレーターで二階へ上がり服屋へ入った 服屋の中は日本で言うユニクロのような庶民的な内装と品揃えで彩られており 僕はその中からフード付の黒い長袖のナイロンジャケットを一着購入して店を出た ( ^ω^)「………」 僕は再度周りを確認し、今僕がいる二階のフロア 通路から見える一階の人々の顔を見極めつつ本屋へ向かった ( ^ω^)「地図は……あったお」 僕は地図を手に取るとロスからニューヨークまでの道のりを調べた ロスからニューヨークまでは車でも大体5000kmは走る必要がある タクシーでそんな長距離を乗せてくれるとは思えないし 今から空港に引き返しても空港はもうマークされている可能性がある ( ^ω^)「やはりここはヒッチハイクしかないかも知れないお」 ここで立ち往生していても仕方がない 僕は取り合えずセンターを出て乗せてくれる車を探す事にした センターを出るさいにも注意を怠ってはいけない 先ほどと同じ行動を繰り返しつつセンターを後にしようとしたその時だった ( ^ω^)(大丈夫みたい……) (;^ω^)「!!」 ヽ`∀´ 「ニダッ!!」 組織の刺客に見つかってしまった ニダーは僕を見つけると一目散に僕目掛けて駆け出した (;^ω^)「くそっ!」 こういう時人にぶつかると居場所をさらに晒してしまう 僕は出来る限り人の間隙を伝って速やかに逃走した ヽ`∀´ 「どけ!どけ!」 人混みを強引印に押しのけて僕に迫ろうとするニダー (;^ω^)「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」 人混みを掻い潜りセンターのドアから外に出る事が出来た僕は 一目散に市街地へ駆けた ;ヽ`∀´ 「どこへ行った!!」 ニダーは僕を見失い完全に人混みに飲まれてしまった ;ヽ`∀´ 「くそっ!!!!」 ;ヽ`∀´ 】「ボス、申し訳ありません ブーンを逃がしましたニダ…」 『なに!! まぁ良い、奴がロスにいる事自体は分かったのだ』 ;ヽ`∀´ 】「今度こそしとめてみせますニダ」 『当たり前だ 他の抹殺隊もそれぞれの箇所へ配置した、お前も追跡を怠るな』 ;ヽ`∀´ 】「りょ、了解」 プツッ (;^ω^)「ハァ、ハァ……もう追っ手がきているのかお…」 早く乗せてくれる車を探さなければ 僕は道行く車に声をかけて歩いた 「いやぁ、ニューヨークまでは行かないなぁ」 「駄目駄目そんな長距離」 「他をあたりな」 (;^ω^) ことごとく拒否されてしまった しかも歩き続けていつの間にか日が暮れてしまっている ( ^ω^) 「仕方ないから今日はホテルにでも泊まって休むかお」 追っ手の事も考え僕はダウンタウンやビーチあたりの賑やかな場所のホテルは避け 街外れの港付近にあるちっぽけなホテルへ泊まろうと考えた ( ^ω^) 「ここで一泊したいのですが」 (#゚;;-゚) 「申し訳ございませんお客様 とうホテルは現在満室になっておりまして…」 (;^ω^)「え?」 ( ^ω^)「少し歩きつかれたお ここで10分程仮眠をとっても」 ( -ω-)「Zzz…」 「おいっ!!」 ( ゜ω゜)「!!」 僕はとっさの大声に目を覚ました 从 ゚∀从 「人んちのアパートの前で何寝てんだ!!」 ( ^ω^)「あぁ、ごめんお…」 僕は荷物をもってそそくさと退散しようとした 从 ゚∀从「ちょっと待てよ」 ( ^ω^)「なにか?」 从 ゚∀从 「お前、観光客か?」 ( ^ω^)「ええ、まぁ」 从 ゚∀从「観光客がなんでこんな所で寝てた?」 ( ^ω^)「ホテルに泊まろうと思ったらどこも満室で だから野宿でもしようかと」 从 ゚∀从「あ?いくらロスとは言え夜の街を野宿なんて危ねぇぞ」 ( ^ω^)「まぁ、なんとかなるお」 そう言って僕はまたその場を去ろうとした 从#゚∀从「アホかっ!!お前みたいなもやしが野宿なんてしようもんなら 強盗にでも襲われて死ぬ可能性だってあるんだよ!!」 ( ^ω^)「そんな事言われても」 从 ゚∀从「まぁ良いや、家に来いよ」 ( ^ω^)「え?」 从 ゚∀从「だから家に来いって言ってんだよ」 ( ^ω^)「え、でも」 从#゚∀从「良いっつってんだろ!!」 ( ^ω^)「………分かったお」 僕は完全に強引に彼女の部屋へ招待されてしまった ( ^ω^)「………」 一人暮らしなのだろうか がさつな性格といかにも気の強そうな外見だが部屋はかなり綺麗で片付けらている 从 ゚∀从「お前意外に思ってるだろ?」 ( ^ω^)「うん」 从 ゚∀从「正直な野郎だ」 从 ゚∀从「なんか食うか?」 ( ^ω^)「お願いするお」 从 ゚∀从「んじゃそこのソファにでも座って待ててくれ」 見ず知らずの男をこんな易々と部屋に入れるなんて 何を考えているのだろうか そんな事を考えながら僕はテレビをボーッと眺めていた ( ^ω^)「………」 从 ゚∀从「出来たぜ!!」 ( ^ω^)「!?」 从 ゚∀从つ△「ほらよ外国に来たら日本食が恋しくなるだろ?」 ( ^ω^)「あ、ありがとう」 まさかアメリカに来てまでおにぎりが食べられるとは思ってもみなかった僕は少し驚いた ( ^ω^) パクリと一口頬張る 塩は薄めで握り具合も適度に空気が入っていて柔らかい また彼女の意外さを垣間見てしまった ( ^ω^)「?」 おにぎりの中になにか緑色のペーストが入っている 从 ゚∀从「あぁそれはアボカドって奴で アボカドをすり潰してマヨネーズと合えたんだ。いけるだろ?」 ( ^ω^)「なかなか」 なんだか芋に近いような味とマヨネーズの組み合わせが絶妙でご飯にあっている ( ^ω^)パクパクパクムシャムシャ! 从 ゚∀从「なんだそんなに腹が減ってたのか、どんどん食えよ」 僕は六つあったおにぎりをあっという間に平らげた ( ^ω^)「ごちそうさま、美味しかったお」 从 ゚∀从「それは良かった」 ( ^ω^)「助けてもらっておいて言うのなんだけど」 从 ゚∀从「なんだ?」 ( ^ω^)「見ず知らずの男を易々と部屋に招きいれるのはどうかと思うお」 从 ゚∀从「大丈夫さ、俺こう見えても人を見る目あるんだぜ お前は大丈夫だと思ったから入れたんだ」 ( ^ω^)「そう簡単に人を信じない方が良いお…」 从 ゚∀从「……お前何か病んでる事でもありそうだな」 ( ^ω^)「別にそんなのないお」 从 ゚∀从「そうかねぇ… お前アメリカには旅行で来たんだよな」 ( ^ω^)「そうだお、実はニューヨークへ行きたくて」 从 ゚∀从「へぇ、丁度俺も明日車で母さんのいるニューヨークへ行くんだ」 ( ^ω^)「そうかお…」 从 ゚∀从「良かったら乗せて行ってやろうか?」 ( ^ω^)「そこまでしてもらっては流石に悪いお」 从 ゚∀从「良いって良いって、ニューヨークまで長距離だからな 一人だと心細いんだよ」 ( ^ω^)「だからそんなに簡単に……」 从 ゚∀从「あっ!そう言えばお前の名前聞いてなかったよな 俺の名前は高岡って言うんだ、お前は?」 ( ^ω^)「……内藤だお」 从 ゚∀从「内藤か、良い名前だな んじゃよろしく!!」 そう言うと高岡は強引に僕の手を握って握手してきた 高岡の手は女の子らしい小さくて柔らかい手だった 从 ゚∀从「ん?お前の手傷だらけだな」 ( ^ω^)「不器用なもんだから料理中の包丁とかで」 从 ゚∀从「ははは!確かにお前不器用そうだもんな 生き方も手先も」 ( ^ω^)「君は何時からアメリカに?」 从 ゚∀从「生まれた時からさ、親父がアメリカ人で母さんが日本人だ」 ( ^ω^)「ハーフって奴かお」 从 ゚∀从「あぁそうだ」 从 ゚∀从「お前の事も聞かせてくれよ 日本の学校の話とかさ」 ( ^ω^)「高校はそれなりに楽しかったお 友達もたくさんいたし」 从 ゚∀从「へぇ~、それでそれで」 ( ^ω^)「君のように僕におにぎりを握ってくれた女の子がいてね 君とは性格が正反対だったけど優しい子だったお」 从 ゚∀从「彼女か?」 ( ^ω^)「恋人同士ではなかったお、でも僕は好きだった」 从;゚∀从「あちゃ失恋か…」 ( ^ω^)「まぁそんな所だお」 从 ゚∀从「気にすんなよ、失恋なんて誰にでもあるからよ!」 そう言って高岡は僕の背中をバシバシと叩いた (;^ω^)「そ、そうだおね」 ( ^ω^)「でも、あの子のおにぎりは本当に美味しかったお 今は遠い所に行ってしまって食べられないけど」 从 ゚∀从「そっか、大丈夫だってまた良い女見つかるからさ! 从 ゚∀-从「俺みたいな」 高岡が悪戯っぽく僕にウィンクを投げかける ( ^ω^)「からかわないでくれお」 僕はクスッとはにかんで返した 从 ゚∀从「ははは!可愛い奴 お前日本ではどんな仕事してるんだ?」 ( ^ω^)「ん? …………………暗殺者だって言ったら?」 从 ゚∀从「は?」 ( ^ω^)「僕が暗殺者だったって言ったら?」 从 ゚∀从「……………」 从*゚∀从「あははは!!お前人を笑わせたいならもっとましな事言えよ」 ( ^ω^)「えへへ、ごめんお」 僕は悪戯っぽく笑って見せた まぁ無理もないか 从 ゚∀从「俺は一応バーで客相手に話したり酒持って行ったりする仕事しててな」 ( ^ω^)「それじゃあ普段から酒癖の悪い客や色々な客を相手にしたりしているから人を見る目があると?」 从 ゚∀从「まぁそうだな」 ∑( ^ω^)「………!?」 从 ゚∀从「どうした?」 (;^ω^)「伏せてっ!!」 そう言って伏せた瞬間部屋の窓ガラスを破りニダーが飛び出してきた ヽ`∀´ 「ニダーーーーッ!!!!!」 从;゚∀从「おいおいおいおい!!何なんだよっ!!」 ヽ`∀´ 「やっと見つけたニダー、今度は逃がさないニダよ」 (;^ω^)「どうして居場所が」 ヽ`∀´ 「お前この辺をうろうろしていたらしいからな 聞き込みをしたらお前を見かけたと言う情報が多く手に入ったニダ」 うかつだった、やはり歩いてでもニューヨークを目指すべきだったのだ だが後悔しても遅い 从;゚∀从ガタガタガタガタ… 彼女も証拠隠滅と言う形で殺されてしまうだろう なんとしても守り抜きニダーを倒して活路を開かなければ ヽ`∀´ 「死ねっ!!」 (;^ω^)「!!」 ニダーが二本のダガーナイフを手に襲い掛かる 僕は懸命に避けるがやはり素手対ナイフでは分が悪い しかも相手は屈指のナイフ使いだ ヽ`∀´ 「ニダニダ~、早くお前の血を見せるニダ」 ニダーのナイフが僕の頬をかすめた (-^ω^)「くっ!!」 ヽ`∀´ 「ありゃりゃ、惜しかったニダ~♪」 ニダーの流れるナイフ捌きを受け流し、避け 僕は頭をフル回転させて打開策を考えた (;-^ω^)(どうすればどうすれば…) ヽ`∀´ 「さすがブーンニダ、俺のナイフを避け続けるとは」 (;-^ω^)(何か何か……あれはっ!?) (#-^ω^)「シュッ!!」 ;ヽ`∀´ 「ニダッ!!」 僕はナイフを避けた一瞬の隙を突いてニダーの鼻へジャブを食らわせる 鼻血を流しニダーが怯んだ隙に机の上に置いてあった雑誌を丸めて構えた (-^ω^) #ヽ`∀´ 「てんめぇ~!!」 ヽ`∀´ 「ニダ? お前この俺を馬鹿にしてるニダ?」 (-^ω^)「いいや、僕は大真面目だお」 #ヽ`∀´ 「ふざけんなゴラァ~!!!!!」 ニダーが怒りに任せてナイフを振り回してきた チャンスだ、怒りで流れるような動きを失ったニダーのナイフに恐れる事はもうない (-^ω^)「ほらほら、僕を殺さないとボスに大目玉だお?」 #ヽ`∀´ 「馬鹿にすんな~っ!!!!!」 ニダーの動き、ナイフの軌道を読み もう一度隙を突いてニダーの鼻に丸めた雑誌で突きを食らわせる ;ヽ`∀´ 「ニダーーーーーッ!!!!」 (-^ω^)「あ~あ~、顔面鼻血だらけになって みっともないたらありゃしないお」 そう言って僕は大げさな笑顔と馬鹿にしたような口調でニダーを挑発した #ヽ`∀´ 「クソガァ~ッ!!!!!」 そう叫びながら隙だらけの突きを放つニダー (-^ω^)「甘いお」 僕は瞬時にニダーの突き出した右腕を横に避けると同時に掴み、そのまま後ろへ周って捻りあげた 右腕を捻り上げたままニダーをうつ伏せに倒す 身動きが取れなくなったニダーは必死にもがきながら毒を吐き続けた ;ヽ`∀´ 「ングググググ……放せっ!!!!!」 (-^ω^)「取り合えず質問に答えてもらうお お前の他に抹殺隊は後何人いる?」 ;ヽ`∀´ 「へっ!!」 ニダーがそっぽを向く それならばと僕はニダーの右手人差し指を一本折った ;ヽ`∀´ 「ンギャァァァァァァァ!!!!!」 (-^ω^)「あぁごめんお」 強引に反対側に曲げた人差し指をボキッとまた戻してやる まぁ戻したところで動かないだろうが (-^ω^)「ほらっ、今度は命をもらうお?」 ;ヽ`∀´ 「構わんやれ!!のこのこ帰った所で俺はどの道死ぬニダ!!」 (-^ω^)「どうしても喋らないつもりかお? 良い忠誠心だお」 ;ヽ`∀´ 「裏切り者、お前は必ず死ぬ そこの女もな!」 从;゚∀从「えっ!?」 (-^ω^)「そんな事は絶対にさせないお…」 (-^ω^)「ほらっ、喋れお……?」 ヽ ∀ (-^ω^)(舌を噛み切って自殺したか…) (-^ω^)「…………」 从 ;∀从 「な、内藤……」 (-^ω^)「高岡、もう大丈夫だお」 僕はそうなだめるように高岡に言い聞かせた 从 ;∀从「そ、そいつ死んでるのか?」 (-^ω^)「………あぁ」 (-^ω^)「きっと君も僕と同じく標的に入れられただろう」 从;゜∀从「…………」 (-^ω^)「でも僕が守るお だから、安心して欲しい」 从;゜∀从「…………」 (-^ω^)「今すぐここから移動しなければならないけど 大丈夫かお?高岡」 从;゜∀从「…う、うん……」 (-^ω^)「それじゃあ荷物をまとめて欲しいお」 从;゜∀从「分かった……」 高岡は覇気のない返事をするとノロノロと寝室へ移動して荷物をまとめ始めた 10分後、一通り準備が出来たのだろう高岡が寝室から出てきた (-^ω^)「それじゃあ出発するお」 从;゜∀从「あっ、内藤お前血が出てるじゃないか!」 (-^ω^)「かすっただけだから大丈夫だお さ、行くお」 从#゜∀从「大丈夫じゃない!! ちゃんと治療しなくちゃ駄目だ!!」 高岡が一喝した (;-^ω^)「分かったお…」 僕はしぶしぶ治療を受ける事にした 从 ゜∀从「救急箱は……あったあった」 高岡は僕の傷に消毒液を塗って頬に絆創膏を張ってくれた 从 ゜∀从「よし、これで良いだろ」 ( ^ω^)「ありがとう高岡、さぁ出発するお」 僕達はアパートを出て外の道路脇に止まっていたミニクーパーに乗り込んだ ( ^ω^)「これが君の車かお?」 从 ゜∀从「あぁ、ちょっと年季はいってるがまだまだ走るぜ」 ( ^ω^)「高岡、大丈夫かお?」 从;゜∀从「正直まだまだ大丈夫じゃねぇけど、逃げねぇとやばいんだろ? 放心して立ち止まってる場合じゃねぇからな」 ( ^ω^)「高岡は強い人だお」 从 ゜∀从「お前ほどじゃねぇよ、あんなやべぇ奴やっつけちまうんだから」 ( ^ω^)「運が良かったんだお、ニダーはナイフ術は確かにずば抜けていたけど 精神面に大きな欠陥があったから勝てたんだお」 从 ゜∀从「……そっか」 高岡は意を決したようにハンドルを握り、キーを回し、ヘダルを踏み込む 乗っているこっちが心配になるような黒煙を上げ、エンジン音を響かせ、ミニクーパーはアパートを出発した ( ^ω^)「ニューヨークまでは長いお 途中から運転を交代しよう」 从 ゜∀从「あぁ、分かった」 外は深夜でまだ暗闇につつまれている 夜の暗闇と静寂を突き破るかのようライトが前を照らし、エンジン音を響かせ、クーパーは走り続けた ( ^ω^)「………」 ニューヨークまでの道のりは長い きっとこの先はニダーよりも手強い刺客が待ち受けているだろう それに彼女も守り通さなければならないのだ 僕はよりいっそ気を引き締めた ブーンは暗殺者だったようです 完 エピローグ
https://w.atwiki.jp/humanworld2/pages/58.html
リュセーナの橋を奪い返して俺達は酒場で歓喜に触れていた。 その後みな宿屋で眠りについたころ 橋の下で見た影に出会う。 そして彼は問う
https://w.atwiki.jp/filinion/pages/455.html
背景 諜報と潜入と戦闘。 いずれの技術も幼き日より才を発揮した君には、さまざまな呼び名がある。 同期曰く、『天才』 師曰く、『完成品』 ギルド長曰く、『至高』 いずれの呼び名も、君を満足させる事はなかった。 更なる高みを目指し、更なる技術を磨く。 気が付けば、ギルドの仕事は『単調』になっていた。 -潮時だ。 新月の夜、君はギルドを抜けた。 以来、君は己の欲するものを探して旅を続けている。 より高い難易度を。 より困難な環境で。 より失敗が許されない状況において、仕事がしたい。 今回、君が受けた仕事は、今までとは毛色が異なる物だ。 ‘暗殺’の対極にある‘護衛’。 未だ、君の目指す高みには至っていない。 ならば視点の転換も悪くはないだろう。 君以外の‘護衛’も数人いるが、程よい‘足枷’になり、仕事の難易度を上げてくれるだろう。 設定